ツアー企画をする職業と言えば、ツアープランナーです。旅行業界を目指す人にとって、人気職種のひとつです。自分が企画した旅行が成功するという喜びは実際にやっている人にとってはとても大きなもので、会社の利益にも直結することで社会的な評価につながったり、会社にとって必要とされる人材になれる、という喜びもあります。その喜びがあるからツアープランナーを続けられるという声も聞かれます。
しかし、ツアーが成功するかどうかの鍵を握っているのは、言うまでもなくツアーの企画内容です。企画内容が「すべっている」となると参加した人の満足度も高くはないと思うので、その意味ではツアープランナーの力量は旅行会社にとっても重要なポイントです。デスクに向かって黙々とツアー企画を練っている姿を想像する人が多いかも知れませんが、今では旅行会社のカウンターでお客様と話をしながら旅行に対する好みや要望をくみ取ってツアー企画を組み立てるという形も多くなりました。その方がお客様の願いや旅行への思いを実現しやすいので、カウンターでサービス精神を発揮するのもツアープランナーの活躍シーンです。 そんなツアー企画のプロになるには、何が必要なのでしょうか。実際に現役で働いている人の仕事ぶりから考えてみましょう。
トラベル業界に就職するには、何よりも即戦力となるスキルとホスピタリティを身に付けることが大切です。
旅行客の目線になって考える能力
売れるものを作る時によく言われるのが「ユーザー目線」です。これはマーケティングの基本で、その商品を買った人、もしくは買おうと思っている人の立場になって物事を考えることをユーザー目線と言います。言葉だけで見ると簡単そうに見えますが、本当の意味でユーザー目線ができている人がどれだけいるかというと、実際のところはそれほど多くはないのでは?と思います。なぜなら、誰もがそれをできていればこの世は売れっ子営業マンだらけになるからです。
ツアープランナーにとってのユーザー目線とは、旅行に参加している人の目線、またはその旅行に参加しようか検討している人の目線です。その人の立場になったら、何があったら嬉しいかを考えます。その逆に、何については重要だと考えていないのか、ツアーに含まれなくても問題ない要素は何かを考えると、少しずつ答えが出てきます。
こうした技術は経験から学ぶことも多く、実際に行ったことがある旅行先では細かいことや自分なりに気づいたことを企画に盛り込むことができます。何事も経験こそ最大の財産というわけですね。
これまでの人生で経験した旅行での感動や思い出を思い返し、その時、自分はナゼ感動したのか、今も思い出に残っているのか?それを考えると自然にユーザー目線になることができます。ツアープランナーの仕事はそれをお客様にお伝えすることなので、「自分だったらどうしたいか?」を考える習慣を持つと、仕事のデキるツアープランナーになれます。
もうひとつ、経験から得られる財産としては企画力とは対極にあるリスク管理能力があります。
経験から得られるリスク管理
旅行には、さまざまなハプニングがあります。悪天候でのフライトキャンセル、パスポートの紛失、お客様同士のケンカなど、旅行には大なり小なり、予想外のハプニングは付き物です。ツアープランナーやツアーコンダクターになって、そんなハプニングを乗り越え、さまざまな経験をすることで人は成長し、あらゆるリスクを回避する術を学ぶことができるのです。
就職前に身に付けられるスキルとは?
ここまでに挙げたツアープランナーとしての資質や能力は、就職後に身に付くものです。では、ツアープランナーを目指している人が学ぶべきことには、どんなものがあるでしょうか。
ツアー企画とは、その土地や旅行テーマの魅力をいかに凝縮して伝えるかが成否を分けます。まずはその国や地域に関する魅力や楽しめるポイント、おすすめスポットなどの情報を収集する能力が求められ、世の中の関心が高いトレンドへのアンテナも必要です。そして限られた旅行スケジュール・予算などの制約の中で、どれだけ盛り込むことができるかという取捨選択から企画が具体化していきます。実際に旅行業界を目指している人の中には旅行会社のパンフレットを片っ端から見て研究をするという人もいます。その中で「このツアーは売れる」ということが判断できるようになれば、プロになってから成功できる資質十分です。
そしてもうひとつ、忘れてはならないのがその企画を伝える能力です。プレゼンテーションで旅行の魅力を伝える能力も当然必要ですが、対面販売だけがお客様への販売機会とは限りません。会社のホームページや旅行パンフレットなど、一度に多くの人が目にする機会のある手段で、写真や文章、旅行の予定表など視覚からの情報で魅力を伝えるツールを使用することで集客につながります。先ほど旅行会社のパンフレットを研究している人もいるとお話をしましたが、すでに出回っている本物の旅行パンフレットを見るのは、そういった「伝える能力」を磨く意味でとてもプラスになります。無料で手に入るものが教材になるので、この方法はおすすめです。学校の授業でも旅行パンフレットは多くの科目で用いられています。
実際にパンフレットを作るのはデザイナーやオペレーターですが、その専門の人たちとの打ち合わせやデザインの指示などで関わることは多いので、パンフレット制作の知識を持っておくこともムダにはなりません。さらに、最近では紙媒体のパンフレットだけでなく Web での宣伝活動も盛んになっているので、Web 上で展開しているツアーの広告を研究するのも意義があると思います。
多様化する旅行ニーズに応えられる経験を積もう
以前のように旅行とはこうあるべき、という形が最近ではどんどん変わってきています。単に観光地を訪問するだけでなく、旅行先でさまざまな体験をしたいという人も多くなっているので、そんなニーズに応えられるだけの「引き出し」を多くしておくことは重要です。
旅行業界を目指す人の多くは自分自身も旅行好きという人なので、その趣味を仕事にいかすためにもたくさんの旅行体験をしておくと良いと思います。また、TV の旅番組や旅雑誌を見ながら頭の中での想像旅行もおすすめです。その時は単に旅行を楽しむというだけでなく、ツアープランナー目線とユーザー目線の両方を意識しながら旅を楽しむと、仕事に役立つ気づきが得られるでしょう。